2005年3月17日

先物取引被害全国研究会
「パブリックコメントへの意見
(個人情報保護法の全面施行に伴う商品取引所法等の一部省令改正)」

    
先物取引被害全国研究会
代表幹事  津 谷  裕 貴
事務局長  山 崎  省 吾

意見の趣旨
1 改正省令案中、目的外利用防止措置を講じる必要があるとする対象情報を、 個人である顧客に関する個人情報すべてに広げるべきである。
2 改正省令案中、改善命令の対象や禁止事項に、前項の個人情報についての 本人の同意なき第三者提供を禁止する旨の規定を設けるべきである。

意見の理由
1 改正省令案は、目的外利用を禁止する情報の内容を「人種、信条、門地、 本籍地、保健医療又は犯罪経歴についての情報その他の特別の非公開情報(そ の業務上知り得た公表されていない情報をいう。)」と非常に限定的なものと している。
  しかし、個人情報保護法は、16条で、あらゆる個人情報につき、利用目 的の達成に必要な範囲を超えた取扱を禁じている(目的外利用の禁止)。
  委託者の住所・氏名・年齢・職業・収入資産状況・金融商品の取引経験・ 購読新聞・趣味特技等、各商品取引員が顧客カードや口座設定申込書に記載 させている情報は2条1項にいう「個人情報」に該当することはいうまでも ない。
  改正省令案では、目的外利用を禁止する個人情報の範囲を限定し、結局、 個人情報保護法よりも緩やかな規制となっているが、商品取引員が一般の個 人情報取扱事業者よりも多くの個人情報を扱うことに鑑みれば(住所、氏名、 電話番号はもとより、取引の内容、さらに適合性原則との関係では収入、資 産、投資経験、購読新聞等の機微な情報まで)、一般法である個人情報保護 法よりも緩やかな規制をするというのは背理である。むしろ、あらゆる個人 情報について目的外利用をしないことを確保するための措置を講じること  は、一般法である個人情報保護法自体によって要請されているといえる。
  したがって、意見の趣旨第1項記載のとおり、少なくとも、目的外利用禁 止を確保するための措置は、全ての個人情報につきなされることを義務づけ るべきである。
2 また、現状では上記の各情報が、安易に第三者(他の商品取引員等)に提 供されている実態があることは、当研究会に所属する弁護士が日常的に経験 するところである。  
  すなわち、商品取引員は委託者が過去に他社で行った取引等を把握してい るケースが少なくないが、これは、商品取引員間で、委託者の承諾も無いの に、委託者の属性、取引内容等について情報交換が行われていることを意味 している。
  委託者の先物取引経験の有無や、過去、現在の先物取引内容等は個人情報 であることは疑いなく、これを委託者の同意もなく他の商品取引員に提供す ることは個人情報保護法23条が禁止する本人の同意なき第三者提供に該当 する。
  したがって、意見の趣旨第2項記載のとおり、改正省令案においても、委 託者の過去、現在の取引等に関する情報を第三者に提供することを禁止する 旨規定すべきである。