平成17年5月2日
金融庁総務企画局市場課  御中
FAX03−3506−6251

金融先物取引法の改正に伴う政令改正についての意見

  先物取引被害全国研究会
代表幹事  津 谷  裕 貴
事務局長  山 崎  省 吾
       (事務所 〒010-0976秋田市八橋南2丁目10番16号
              秋田県JAビル8階津谷裕貴法律事務所
             TEL 018-864-2255 FAX 018-864-2268)

 当会は、商品先物取引、外国為替証拠金取引等の被害救済、研究に取り組む、全国の弁護士により組織された研究会であるが、金融先物取引法施行令案について、以下のとおりの意見書を提出する。


意見の趣旨

1 金融先物取引法施行令案第9条「法第59条第1項第2号に規定する政令に定める金額」は10億円とすべきである。
2 金融先物取引法施行令案第13条「法第68条第5号に規定する政令に定めるもの」として以下の内容を追加すべきである。
(1)顧客に対して金融先物取引業者が自らその相手方となって当該金融先物取引を成立させるのか、又は媒介し、取次ぎし若しくは代理して(以下媒介等という)当該金融先物取引を成立させるのかの別、ならびに媒介等による場合は、その業者の商号、所在地、金融先物取引業者との関係
(2)顧客に対して金融先物取引業者が自らその相手方となって当該金融先物取引を成立させる場合に通貨等の売り付け及び買い付けの価格は当該金融先物取引業者が独自に定めるものであること
(3)顧客に対して金融先物取引業者が媒介し、取次ぎし若しくは代理して当該金融先物取引を成立させる場合にはどのようにして通貨等の売り付け及び買い付けの価格が定められるのかということ
(4)通貨の売買について生じる利率、特に金利差が生じる場合はその旨をわかりやすく明示すること


意見の理由

第1、総論
 1.当会の外国為替証拠金取引の規制に関する基本的立場は、当会の平成16年12月24日付け「外国為替証拠金取引被害に対する意見書」(以下、意見書という。資料1)記載の通りである。
   当会に所属する多くの弁護士が、外国為替証拠金取引の被害救済にあたっているが、それらの被害実態としては、高齢者や主婦などに対し「外貨預金のようなもの」「銀行の金利はほとんどつかないが、高利回りである。」などと利益や安全性を強調する一方で、危険性についてはほとんど説明をせずに勧誘し、その後、予想に反した場合には、買いのポジションに対し、売りポジションを勧めたりして(両建)、追加証拠金や不足証拠金を請求するような事例が目立っている。また、顧客の値洗損失がようやく回復した状態で、証拠金返還を求めたところ、無断売買をして、損失発生を理由に、証拠金返還を拒否して係争となっているものもある。
 2.また、国民生活センターにも膨大な数の苦情が寄せられていることが公表されているところである。
 3.当会としては、相場を指標とした差金決済取引(しかも、レバレッジ率は、大きいものでは30倍以上である。)は、基本的には賭博的要素が強いため、少なくとも公設市場の存在しない現在において、現実の通貨の必要も、リスクヘッジの必要もない一般消費者が投機目的で高レバレッジの為替取引を行うものは、単なる賭博ないしマネーゲームに過ぎず、公序良俗に反するものと考えている(上記当会意見書参照)。
 4.しかし、残念ながら、今般、店頭金融先物取引に含める形で、かかる取引を認める方向で法改正が行われることとなった。
 不招請勧誘の禁止など、一定の評価すべき制度も導入されるようであるが、今般の政令改正部分について、現実の被害実態を目の当たりにしていて、不十分と感じられる点があるので、意見を述べるものである。


第2 資本金について(政令9条1項関係)
 1.金融先物取引業者の最低資本金は、10億円とすべきである。
 店頭金融先物取引を行うということは、いわば私設の為替市場を開設するに等しいものであり、また、現実に顧客から預かる金員は、10億円を超える単位になることは明らかである。別途、内閣府令で、自己資本規制比率を導入する(法82条関連)としても、資本金5000万円程度の企業が、市場を開設するというのはあまりにも危険である。最低限、銀行と同等の資本の裏づけは必要であると考える。
 2.ファーストクラブ事件、フォレックスジャパン事件など、既に摘発された業者もあり、また、強制執行などの手段をとっても回収できない外国為替証拠金業者は既に多く発生しているが、基本的な資本の裏付けがない企業によるこの種取引の容認が、悪徳業者に利用され、消費者被害に直結することは明らかである。

第3 広告において表示すべき事項(政令13条関係)
 1.取次型か相対取引型かの区別。
 相対取引であれば当該金融先物取引業者とは利益相反関係になり、また第三者との金融先物取引を媒介、取次するのかあるいは当該第三者の代理として取引するのであれば当該第三者についての情報を取得する必要がある。したがって、顧客が当該金融先物取引を開始するか否かを判断する場合に取引の態様は最重要事項であるから広告事項とすべきである。
 当該金融先物取引が金融先物取引業者との相対取引であるのかあるい金融先物取引業者は顧客と第三者との金融先物取引を媒介、取次するのかあるいは当該第三者の代理として取引するのか取引態様については最低限広告事項とすべきである。
 また、取次型の場合には取次先の業者の商号、所在地ならびに業者との関係を明らかにすべきである。
2.売買価格等の決定方法について
  相対取引においては、外貨の売買の価格は、何物にも拘束されることなく、業者が自由に決めることができるものである。手数料は無料と称し、売買の利ざやを大きく取るとか、あるいは、各種の発表レートの中から業者に有利なものを採用する虞もあることから、売買価格は、そもそも各業者が自由に定めうるものであることを明示すべきである。
その上で、当該業者の場合は、具体的にどのようなレートを採用し、どのような規則に基づいて、顧客が実際に売買する際のレートが定められるのかを明示すべきである。
 3.スワップ金利について
外国為替証拠金取引においては、「スワップ金利」と称する金員のやりとりがなされている。これは、本来、実際に、ドル・円の現金を資金調達したと仮定した場合の二国間の金利差に基づいて課されると言われている。しかし、その利率は、業者によって、まちまちである。しかも、零細な為替証拠金業者が現実に、大手金融機関のように資金調達・資金運用を行っているかは甚だ疑問であり、その実態は不透明である。単に高金利を装って消費者を勧誘する手段として用いられている感が否めない。
そもそも、差金決済を目的にして「現受け」を全く予定していない(したがって想定元本相当額のキャッシュの移動は全くない)と思われる外国為替証拠金取引について、このような金利の受け渡しを行うことの合理性については疑問もあるが、仮に、この授受を許容するのであれば、金利を正確に開示すべきである。
また、売の場合と、買の場合が異なるのであれば、それぞれの金利を表示し、特にマイナスの金利が発生する場合には、その旨を、プラスの金利についてよりも大きく、わかりやすく表示することを義務付けるべきである。少なくとも、我が国の一般市民にとって、自分が預けている資金から「金利が引かれる」という事態は容易には理解しがたいものであり、その点を強調する必要性は高い。                    以 上
添付資料 当会作成の「外国為替証拠金取引被害に対する意見書」